Emulation Theory 第3章 運動表象 後編

The emulation theory of representation: motor control, imagery, and perception.
Grush R.

  • エミュレーションとシミュレーション
    • 両方の理論において運動心象があるときには運動コントローラーが活性化すると考えていることは共通である
    • 一方、シミュレーション理論では、コントローラーの活性化だけで十分だと考えていることにくらべて、エミュレーション理論では運動心象を起こすにあたって、運動コントローラーだけでは十分ではなく、筋骨格システムのエミュレーションを駆動する必要があると考えている点が相違点である
  • エミュレーション理論の意味
    • 運動コントローラーだけでは、運動力学的なプランや運動感覚的なプランは可能であるが、運動心象にある自己感覚や運動感覚は起こらない
    • 運動のプランから色々な感覚を起こすためには、自己感覚や運動感覚の測定が必要であるが、そのことを実現するためには実際の身体へ運動情報を投射するか身体のエミュレーターのようなものに投射する必要がある
  • エミュレーション理論を支持する実験
    • 切断してしまった足があたかもあるように感じる現象の中で、その足を動かせる人と動かせない人がいる
    • 動かせない人は、切断する前にすでに足を動かせなくなっている状態を経験している。一方、動かせる人は、切断する前にも足を動かせていて麻痺はなかった
    • つまり、切断する前から麻痺を経験しているひとは、エミュレーターそのものが麻痺をエミュレートしており、その結果切断した後にも麻痺を体験しているものと思われる
  • エミュレーターの維持
    • エミュレーターは、インプットとアウトプットの情報をマッピングすることによってその役割を維持している
    • 足が切断された場合には、アウトプットがあってもインプットが返ってこないのでマッピングが変化する。ただし、切断される前に麻痺が起こっていれば感覚のエミュレーターも新しいマッピングを作ることができるが、麻痺がなければ感覚のエミュレーターはそのままになってしまう。だからこそ、動かせると思ってしまう
      • このことは情報が欠如していることと何もおきていないという情報の違いを脳は判断できていることを意味している
  • エミュレーター理論の神経基盤
    • 様々な研究からエミュレーターは脳の中では主に小脳に局在していると考えられる