フロー体験

Neurocognitive mechanisms underlying the experience of flow.
Dietrich A.

脳は、二つのシステムを持っている。一つは意味のあるものをさがす感情的な脳システムであり、もう一つは多くのことを並列処理し全体の特徴を捉える認知的な脳システムである。この二つのシステムは解剖学的にも違うだけでなく、情報処理の仕方も違っている。

感情システムはルールベースで言語によって表現され意識覚醒を必要とし形式知的なものである、一方、認知システムは経験ベースで、言語によっては表現されず意識覚醒も必要ではなく暗黙知的なものである。ただし、実際の生活シーンにおいてはそれぞれが独立して存在するわけではなく、程度の差はさまざまだがオーバーラップしている。

たとえば、言語の学習の際に最初は形式知的なシステムによって一つ一つしっかりと学ばなければならないが、こなれてくれば暗黙知的なシステムによって十分処理できるだろう。それは母国語の際顕著なようにすでに身についているので暗黙知的に使うことができ意識する必要はないだろう。

ではなぜ形式知的なシステムは存在しているのだろうか?
暗黙知システムは、単純な状況においてはその再現性、反応性においても非常に有効で効率的であるが、複雑な状況においては非常に非効率なものになってしまう。このときにこそ形式知的なシステムが必要となる。

形式知的なシステムにおいては柔軟性が実現される変わりに効率性が劣ってしまう。一方、暗黙知的なシステムにおいては効率性が実現されるが、柔軟性にはかける。このように両者はトレードオフとなっている。

フローと呼ばれる状態は、チクセントミアイによれば何かに没頭して楽しくなるというものであり、この状態は、暗黙知的なシステムによって実現されるが、そのためには形式的なシステムが動いていないことが前提となる。つまり、形式的なシステムによって実現される創造性とは別のものである。