脳のセミナー

演者:村田 哲氏(近畿大学医学部)
題目:「物をつかむための神経回路」
日時:2005年7月12日(火)15:00〓18:00(今回は開始時刻がいつもより20分遅くなります)
場所:京都大学基礎物理学研究所(K206)
概要:視覚の背側経路は空間情報処理に関与すると考えられてきたが、そうした空間情報は運動制御にとって重要である。私たちは、手指のより細かな操作運動の制御に関わる神経回路について研究を行ってきた。一連の研究から、下頭頂小葉と腹側運動前野を含むネットワークが3次元物体についての情報を使って、手指操作運動の制御をおこなっていることが明らかになった。近年、こうした感覚運動制御の神経回路は、認知機能との関わりも指摘されている。サルの脳においても、手指操作運動に関わる下頭頂葉と腹側運動前野におけるミラーニューロンの発見により、コミュニケーションや心の理論などとの関連が取りざたされている。しかし、実際にミラーニューロンの発見されたサルの脳で、こうした認知機能と本当に結びつくのであろうか?このセミナーでは、下頭頂小葉―腹側運動前野のニューロンの機能的性質とともに、ミラーニューロンと運動制御との関連について考える。このことは、ヒトの認知機能の発達と運動制御との関わりについて何らかの示唆を与えると考える。

人の話とニューロンの話は別だという指摘は、至極もっともだったけれども、そのことはまた認知神経科学の難しさを物語っているのだろう