組織心理学

企業組織も、個人と同じように、動揺したり落ち込んだりすることもあれば、心理学の専門家の“治療”を受けることで機能を回復させることもある

米ミレニアム・テレサービセズ社の設立者の1人で前 CIOの経営パートナー、ブライアン・パッシュ氏に招かれた精神科医、クリスティン・トゥルーエ氏は、組織心理学の専門家である。トゥルーエ氏は、組織心理学の分野で組織診断と呼ばれているテストを実施し、その結果に基づいて「組織開発プロジェクト」の立ち上げを支援することになったのだ。

 同氏の“処方箋”の効果はてきめんだった。今では、ミレニアム社員や同社にかかわるほとんどすべての関係者が、「このプロジェクトによってミレニアムのIT部門は再生した」と評価している。IT部門の生産性と業務効率が向上し、経費が削減されたほか、スタッフの離職率も低下した。最も重要なのは、スタッフらの言い争いなどが目に見えて減り、全員が生き生きと仕事に取り組むようになったことだ。

 トゥルーエ氏は、ミレニアムのIT部門が直面していたような問題は、企業環境が急激に変化しているときに、しばしば見られる現象だと指摘する。

 「例えば、企業が同族経営から脱皮しようとするときや、他社と合併するとき、新興企業が事業を急に拡大するとき、業績が伸び悩んでいた企業が急激に成長するときなどが、そうした変化の代表的な例だ。企業組織の内部には複雑な力関係が存在し、それらが互いに影響し合っているため、何かをきっかけにそのバランスが崩れると、どこかにひずみが生じやすい。多くの場合、それは目に見えるかたちでは現れず、マネジメント層の権力争いのような状況を引き起こすのが一般的だ。そうした意味で、ミレニアムは典型的な例だった」(同氏)